2012年2月19日日曜日

「は」と「が」の違い

「は」と「が」の使い分けは、日本語学習者にとって最も難しい文法項目の一つだと言われている。よく説明されるのは、「は」はその文が何について述べるかということ、つまり主題を表す助詞である。「が」は「を」や「に」と同じく格を表す格助詞であり、動作や状態の主体、つまり主格を表す。「は」と「が」の使い分けは、次の4つについて説明する必要がある。
 1:有題文と無題文
 有題文と無題文の使い分けには、述語の種類や主格名詞の種類、談話の中での機能などが関係ある。述語の種類については、述語が恒常的な事態や繰り返し起きる事態を表すときは、有題文になる(1)。一時的な事態や一回限りの事態を表すときは無題文になる(2)。主格が「だれ」や「なにか」のような不定名詞のときは、無題文になる(3)。また、有題文は、前の話題を継続する機能をもっている。無題文は、新しい話題を設定したり、話題を転換したりする機能をもっている(4)。
(1)私は東京に住んでいる。
(2)雪が降ってきた。
(3)だれかが大声で叫んでいた。
(4)むかしむかい、ある村におじいさんが住んでいた。ある日、おじいさんは山へ木の枝を取 りに行った。
 2:顕題文と陰題文
 主題を持つ文には、主題を「は」で明示する顕題文(5)と、主題を「は」で明示しない陰題文がある(6)。顕題文では、文のさまざまな成分が主題になれる。陰題文では、述語の部分が主題になっている。
(5)あの人は社長さんです。
(6)あの人が社長さんです。
 3:文の中と節の中 
 従属度が高い節の中では、基本的に主題を表す「は」は使わない(7)。複文で主文の主格と節の主格が同じときは、主格が主題になって「は」で表されるのが普通である(8)。従属度が低い節の中では、単文や、複文の主文の中と同じように、主題の「は」が現れる(9)。
(7)私が高校生のとき、父がなくなりました。
(8)私は高校生のとき、テニス部でした。
(9)私はこの小説は面白いと思う。
 4:対比と排他
 「は」は対比を表すものであり、「が」排他を表すものである。対比されるものは、同類のものであることが多く、述語は「する」、「しない」のように対立的なものであることが多い(10)。一方、排他の「が」は、典型的には、比較のを表す構文、つまり「~より~のほうが」のような形の文で使われる(11)。
 (10)私は教育学は勉強したが、心理学は勉強しなかった。
 (11)日本より中国のほうが広い。

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