日本語教育能力検定試験に合格するための言語学
アニマシー
アニマシー(有生性)とは、生きている程度ということである。人間に近いものの方はアニマシーが高い。日本語の存在表現もその一つである。アニマシー高い(つまり生きている感じがすごくする)ものの存在は「いる」で表し、アニマシー低いものの存在は「ある」で表す。
例:怪しい気配に振り返ると、人を襲うお化けの木が、いつのまにか、そこに(いました・ありました)
「いました」にする場合、木は根っこのところが人間の足のようになって、地面から抜けて走れるというイメージである。動物に近い、アニマシーが高い。
「ありました」を選ぶ理由は、木が動けなくて、幹に恐ろしい顔をつけているというイメージである。植物で、アニマシーが低い。
ヴォイス(態)
心理的で動的な遠近感覚は、ヴォイスに関わっている。心理的な遠近感覚というのは、人間が心で感じる遠近感覚で、ある人に対する親近感を感じるかとか、疎ましく感じるとか、いった親疎の感覚は、その代表例である。動的とは、その場面や状況によって早く変わるということである。
「ジェリーがドムをやっつけた」という文では、中心部位のジェリーが主役で、ドムが脇役である。主役のとこを一般に前景、あるいは、図という。脇役のことを背景、地という。「ドムがジェリーにやっつけられた」では、もともと背景のドムが今度前景になる。こういう具合にデキゴトの前景ー背景に応じて言語表現が変わるパタンーのことをヴォイスという。代表的なヴォイスとしては、能動ヴォイス、受動ヴォイス、使役ヴォイスがある。
能動態とは、話し手が力の与える手に注目してこれを前景にするというヴォイスのことである。普通、話し手が力の与える手に注意するわけだから、能動態は無標である。「無標」は、普通であればわざわざ標識を付ける必要がないことである。逆に、特殊だ、変わっている、普通じゃないことを「有標」と言う。受動態は特殊ヴォイスで、有標である。
受動文は三種類ある。所有関係によってできる受動文を所有受動文、あるいは持ち主の受動文などと呼ぶことがある。
例:一郎は泥棒に車を盗まれた(一郎は車の持ち主、所有関係)
一郎が田中さんに子供を褒められた(一郎の子供、所有関係)
また、所有関係が特にない場合でも、第三者が強い被害感を持てば因果関係が形成され受動文を被害受動文、あるいは、迷惑受動文などと呼ぶ。
例:夜中に子供に泣かれて眠れない
雨に降られて風を引いた
所有受動文や被害受動文と区別して、普通の受動文をまともの受動文
例:トムがジェリーに殴られた
犬が強盗に殺された
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